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はみだしにっき

2008年4月29日

「晏子」

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宮城谷昌光さんの「晏子」を読んでいます。20代のころ、宮城谷さんの本を夢中で読んだのですが、その最初が「晏子」だったと思うし、どれもこれも好きだったけど、マウイにたった一つ持って来たのも「晏子」です(全部は持って来られなかったから)。それを昨日久々に開いたのは、やっぱり「新選組!」のコーフンの余波だったというか、居ても立ってもいられない感じの延長でした。

「晏子」は紀元前の中国の話だし、三谷さんと宮城谷さんの語り口は全く違うんだけど、真摯に思い切り生きた、そういう意味でかっこいい男性がたくさん出てくるところが「新選組!」と「晏子」などの宮城谷文学は共通していると思います。歴史上の実際のこの人達が、三谷さんや宮城谷さんが書いた通りだったかどうかは、言ってしまえばどうでもいいんです。いや、どうでも良くないんだけど、一番大切ではないんです。「晏子」には、それぞれの志に従って見事に生きた人達が描かれていて、読んでいるとやっぱり居ても立ってもいられない感じになる、その感じや、自分は性別も立場も生きている時代も(ついでに身分も)違うんだけど、この人達の見事さに倣いたいと背筋を伸ばす感じ、それが私には魅力なんですね。

たとえば、宮城谷さんは春秋時代の中国を生きた晏子のお父さんの方、晏弱をこんな風に描いています。・・・余談ですが、晏子の「子」は敬称で、晏さん、みたいな感じでしょうか。晏どの、とか。このお話は晏家の父子、晏弱と晏嬰を描いていて、二人とも晏子と呼ばれます。で、引用は晏弱が斉の国の代表として諸侯が集まる会合に向かう場面から。このとき、斉と、会合を招集した晋という国は緊張関係にあり、晏弱たちは会合の地で殺させる可能性がありました。それでも君命を果たすため、晏弱たちは会合が行われる断道という地に向かっていました。(ちなみに各国の代表は護衛の兵を連れて行くのが通例だったので、晏弱も兵と一緒です)

急坂にさしかかると、晏弱は馬車を降りた。兵たちが集まり、馬車を押した。晏弱は歩きながら、

ーまだ、兵に力がある。

と、みた。そのことは逆に、兵たちも師(かしら)というべき晏弱の旺盛な気力と体力を、それとなくみて、この強行軍の苦痛をしのぐ気になっていたということである。また断道での会合がたとえ死地となっても、晏弱は兵を見捨てて逃げるような卑劣はみせず、かならず兵の先頭に立って死ぬであろうし、だからこそ兵たちの胸中に晏弱を殺したくないという哀情が生じはじめ、いうなれば適地に足をふみいれたこの集団は、そういう感情の総和になりつつあった。

ね?なんか、この集団の一員になりたくないですか?晏弱に一目会ってみたいと思いませんか?そういうワクワクが、全編つながっているんです。宮城谷さんの語り口は静かなんだけど、全編ドキドキなのです。冷静さの中の激しさというか、そういうものがあります。イタリアを描いている塩野七生さんもそうですね。私、そういうのが好きなんですね、きっと。

あとねえ、このところ、英語の本ばかり読んでいたので、久々に日本語を読む楽しさもあります。日本語っていいですねえ(笑)。あと、日本オリジナルじゃないけど、漢字もいいです。いっぱいあって大変だったけど、子供の頃に漢字を覚えてよかった。例えば中国の君子が死後「文公」とか「武公」とか「霊公」という風に呼ばれるんですけど、その字を見ただけで、なんとなくいい感じとか、強そうとか、不吉な感じとか、分かるじゃないですか。西洋でもそういうことはしてたんだけど、例えば「Philip the Good」「Charles the Bold」とか。でも「文公」「武公」の味わいがたまらない・・・・・。字そのものに意味があって、ついでに力まで持っているような。私が日本人だから漢字のニュアンスの方に親しみもあるし好きだというだけなんだろうけど、もちろん、優劣があることではなくて、自分の東洋人の部分を感じてしまうといか、日本にいたときは気づかなかった自分の琴線を発見してしまうというか。そんな小さなことを味わえること自体が嬉しいというか。

ま、なんかまとまらないので(まとまることなんて滅多にないけど)、このへんでやめて「晏子」の続きを読むことにします。

5月3日

寝不足です。

「晏子」を読み終わりました。休日に「ちょっと日本語の小説を読む」くらいのつもりで読み始めたのが、結局、今週はずっと時間を見つけては「晏子」を読み続けていました。文字通り、朝目が覚めると出勤までの短い時間に読み、帰宅すると読み、夜中に目が疲れて限界になるまで読み。「ムカシは徹夜できたのに」なんてブツブツ言いながら就寝し。それだけ面白かったです。初めて読むわけじゃないのに、面白かったです。

そんなことしてたら月が変わりましたね。日本ではゴールデンウィークの真っ最中ですね。マウイはいくら政治経済に弱い私でも分かるくらい、経済が冷え込んでいます。でも、それでも、芯まで冷え込んだ気分にならないのは、やっぱり私が呑気なのか、気候に助けられているのか・・・・・。

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