ギルバート・グレイプ

1993年アメリカ、118分

原作:ピーター・ヘッジス
監督:ラッセ・ハルストレム
出演:ジョニー・デップ、レオナルド・ディカプリオ、ジュリエット・ルイス

2008年9月9日

私は20代の頃レオナルド・ディカプリオが大好きだったので、彼が自閉症の役を見事に演じたと評判だったこの映画をずっと見たいと思っていました。だけどね、なぜか日本のレンタルビデオショップでは「ギルバート・グレイプは貸し出しできないことになっている」とかで、レオナルドコーナーでも必ずコレが欠けていたんですよね。理由は分からないのですが、ダメだったんです。しかも、私がビデオやDVD を買うようになったのはつい最近のことで、あの頃の私にはもう見る手段がなかったのです。

マウイに来てから、もちろんレンタルビデオショップで探しました。アメリカ本土なら、と思ったけど、アメリカ本土でも品揃えの薄い田舎マウイのお店では何周棚をチェックしても見つかりませんでした。店員に「ギルバート・グレイプっていう映画を探してるんだけど。英語のタイトルは分からないけど、ジョニー・デップとレオナルド・ディカプリオが出てるの」と聞いてみました。出演者で検索してもらおうと思ったのです。店員は「そんなの聞いたこともない」と随分そっけなかったです。・・・ところが、やっと今回オンラインのレンタルサービスで見つけてみたら(そうなんです、最近このサービスを使い始めて、映画づけの生活になりそうなんです)、タイトルは「What’s Eating Gilbert Grape」で、ちゃんとギルバート・グレープが含まれてるじゃないですか。あああ、どうせ、発音が悪かったんでしょうよ。フン。(笑)

・・・と、どうでもいい前置きが長くなりましたが、ディカプリオの演技、本当にうまかったです。ビッグネームになってから演技力の見せ所を失ってしまったように思うのですが、やっぱりスゴイ。本当に自閉症で、本当に知的障害があるように見えました。そしてギルバート・グレイプ役のジョニー・デップもやっぱりうまいですね。

英語のタイトル「What’s Eating Gilbert Grape」を訳せば、「ギルバート・グレイプを疲れさせているもの」あるいは「悩ませているもの」「イライラさせているもの」ということになるでしょうか。映画を見れば、それは彼を取り巻く全てと言えそうです。ディカプリオ演じる障害のある弟。面倒見はいいけど、自分が面倒を見る境界はきっぱりしているような姉。思春期の身勝手な妹。父親がいなくなってから家にこもりきりの拒食症の母親。なにもすることがない田舎町。太り過ぎの母を笑う街の人々。人妻との不倫・・・・・。

それでも、ギルバートはそれら全てに淡々と付き合い、何も感じないかのように日々を過ごしています。無神経にならないとやっていられないのだろうと思って見ていると、ジュリエット・ルイスが演じる、トレーラーで旅をする女の子には「いい人になりたい」なんて言ったりする。じゃあ、いい人になりたくて、本当にいい人で全部を受け入れて静かでいられるのか?と思うけど、そんなに達観か諦観するには若いと思うんですよねえ。で、変化のない毎日の繰り返しを見ているうちに、途中で少し退屈したんです。「もしかして、私この映画、好きじゃないかも」と一瞬思ったのです。「ディカプリオがめちゃくちゃ上手くて、それを見られただけがものすごく良かったってことで終わるのか?」と。

でも、そうではありませんでした。しばらく淡々として、少しイライラと飽きた気分になって、それこそがギルバートの生活でもあり気分でもあって、それを感じられたところで、ギルバートの堪忍袋の緒が切れます。言うことを聞かない弟を殴って家を飛び出してしまうのです。見終わってから考えてみれば、そこまで我慢してからじゃないと、ギルバートが気が短いだけに見えてしまって、おそらく共感できなかっただろうと思う。そこまで我慢していたギルバートも、弟を殴ったことを後悔して泣いてしまうギルバートも、前半の退屈の後だからこそ愛しく思えたように思います。そう、ギルバートが嫌々家族の面倒を見たり養っていたのではなく彼らを愛していることを、家族もみんな愛し合っていることを、映画はとても静かに見せていました。

それまで静かだったギルバートが、それまでと違う行動を取ったので、家族も少し変わります。少しの変化だけど、変化が何もないような生活の中では大きな変化でした。それで、悲しいこともあるんだけど、終わりは、・・・ここまで書いてナンですが、終わりは多分書かない方がいいですよねえ。10年以上前の映画だけど、これから見る人のために。終わりは、私の好きな終わり方でした。この映画、大泣きしたり大笑いしたりするものではありませんでしたが、とてもよかったです。やっと見られて嬉しかったです。

Copyright (c) 2008 Niko. All rights reserved.